ねこの包丁(一つの決別の話)
前の記事で書いたのですが、包丁も猫柄のを買ったんです。
足跡が1cmの目安になっています(と言われても…あんまり使う機会ないのですが…)
単に近所のホームセンターに売っているのを見つけて、かわいかったから買ったんです。
でも、自分の中で、これを買うのは、割と大きな決意でした。
決意というか、決別?
元パティシエだと言うと、高確率で「じゃあ料理も得意なんだろうね」と思われます。たぶん、料理とお菓子作りでは、イメージ的にお菓子作りのが難しそうだから。きっと私も当事者でなければそう思っていたでしょう。でも両者は全然、違うものです。
もちろん、器用に、どちらも上手にできる人もいるでしょうが、そうじゃない人もいるんです。
つまり…私は、料理は得意じゃないのです。
いや、謙遜ではなく本当に。作れないとかじゃないけど、上手くはない。製菓学校に通い、パティシエとして働いたことはあるけど、それで「料理が得意」にはなれませんでした。
…残念です。無念です。私だってできるなら料理だって上手に作れるようになりたかった。お弁当だってちょちょいとかわいく作れる人になりたかった。だってそういうの、すごく素敵だと思うから。そういうのができたら素敵な女性に近づけると思うから。
多分昔読んだマンガの影響です。
ちなみにこれの影響でパティシエになろうと思いました(単純!)。京都好きもここからかも。やばい。影響の受けやすさがやばい。私に気楽にマンガを貸してはいけない…人生変えちゃうから…。
主人公の男性(表紙の中央)に恋する女の子がおりまして。その子が主人公に喜んでもらおうと「おふくろの味」を作れるように特訓するんですよね。最初は生魚が苦手だったのに、それも見事に克服して。
そういうの、すごくかわいいな~~と思ったんです。家庭的なおかずがさらっと作れるのっていいな、って。
製菓学校に通っていた間、友人たちといろんなお店に行ったし、いろんな本も見ました。お菓子だけじゃなく、本当に色々。だから色々いいものの存在を知りました。特に心を惹かれたのは道具。プロの料理人さん御用達のお店とか、すごく憧れました。そりゃ値段は高いけど、いいものはずっと使い続けられるから、いつかはあのお店で買いたい!とか思ってました。
私は製菓専門ですから、自分で買い揃える道具も製菓に使うものが最優先になります。家で、料理にしか使わない道具はどうしても後回し……。
でも特に包丁は「いいもの」への憧れが強く、いつかは欲しいとずっと、ずーーーっと思ってました。もう少し料理が上手くなったら買おう、お金が貯まったら買おう…みたいに。その時はせっかくだから名前も入れたりしよう…とか考えて。
結婚した時、一人暮らし歴の長かった旦那さんは生活に必要なものはすべて持っていたので、当然包丁もありました。
ただ、冷蔵庫とかベッドとか…、二人で暮らすために買ったもの、買い替えるものもたくさんあって……(ちなみにオーブンレンジは色々悩んだ末に実家から持ってきました。ロールケーキの天板が入るサイズってなかなかないんですね…)。だから、ずっと憧れのあった「いい包丁」を買うならその時が最高の機会だったんです。
でも買わなかった。
諦めました。「こだわりの包丁を使って、さらっとおいしい料理が作れる素敵な女性」になることを。
自分には無理だとやっと悟りました。……えらい時間がかかってしまった。
結婚したんだし、お弁当も二人分作る!と意気込んでみたものの、新しく始めた仕事が忙しくて、お弁当どころか普段のご飯作りもやや大変になってきた時、ツイッターでよくレシピを見かけていた方の本を買いました。
ひじき煮とか、切り干し大根の煮物とかもレンジでできるって……。かぼちゃの煮物も……。
最初は、非常~~~に抵抗がありました。レンジを使った料理で大成功!みたいになったことがなかったし、ちゃんとできるのか不安もあったし、何より、何より……そんな、「家庭的なおかず」を、レンジにおまかせだなんて、なんだか嫌で……。
鍋で、逐一様子を見ながら、味見もしながら作らなきゃ、おいしくないんじゃないの!?
大体、そんなのって、私の憧れていた素敵な女性のイメージとは程遠い…!
でも普通にできました。おいしかった。いや、お鍋で作った方がおいしくできるのかもしれない。調味料だって決められた順番に入れなければ味のしみこみ具合が違ってくるのでしょう(レンジ調理は最初に全部入れます)。
でも、ラク!!すごくラク!!鍋で煮込んでいる間は目が離せないけど、レンジはスタートしたらほったらかしでOK!すばらしい!!
休みの日にレンジでかぼちゃ・ひじき・切り干しなどの仕込みをして冷蔵庫に作り置きを置くことで、なんとかお弁当のおかずもまわせるようになりました(同じパターンばっかりになるけどね…)(ふりかけは替えます)(←おい…)
他にも、肉料理とか麺類とかも色々載っていて、かなり使える本です。続編も余裕で買いました。
次はこれやってみようかな、これもおいしそうだな……
そう考えながら本を見ていて、ああ、私はこれでいいんだなって思いました。おいしく食べられたらいい。手のかけ具合でよりおいしくなるとしても、それで自分がしんどくなってしまってはだめだ。
憧れは憧れで結構だけども、今自分に必要なのは、京都の老舗の有名な包丁(名前入り)じゃないんだ。
楽しく、ラクして、家事をこなすことだ。そして時間の余裕を自分で作って、笑顔でいることだ。
そのためにかわいいネコちゃんの癒しパワーは大変有効だ!!
……と思ったので買いました。「かわいかったから」だけで全然済みますね。もう2500文字くらい書いてるけど。
てか、かわいいだけで実用性ゼロみたいに書いてますが、パッケージ裏には砥石を使った研ぎ方もきちんと書いてある「ちゃんとした包丁」なので、メーカーさんにめっちゃ失礼ですねこの記事……。すみません……。砥石とか使えないのでシャーってやる包丁研ぎ器使います……。
あと想像以上に日々癒されてるので、ペティナイフもお揃いで買いたい。