こんなカフェが近くにあったら絶対通う!!(「マカン・マラン」シリーズ感想)
時々、猫もいるみたいだし!!
本は……本はないのかもな……。いやそれなら自分で持ち込むからそれでいい。通う。
表紙が並んでるだけでめちゃくちゃかわいいですね……。
装丁がめちゃ素敵です。カバーの紙質がザラザラしてて独特。
気高きドラァグクイーンの「シャール」さんが営む夜食カフェ「マカン・マラン」。悩みを持つ人が引き寄せられるようにここに集って、おいしいお料理やお菓子やお茶で癒されていきます。
1巻につき4話ずつ。それぞれのお話で主人公が変わるので「短編集」になるのかな?どこから読んでも大丈夫ですが、出てきた主人公が「常連」となって、後で出てくる別の主人公と出会ったり、時には仲良くなったりするので、やはり最初から順番に読むことをお勧めします。
私は個人的に「短編集」に苦手意識があるのですが(短すぎて、登場人物の心情に全然寄り添えないまま終わってしまうと、突き放されてる気持ちになってしまう)(村上春樹さん大好きだけど、短編集では突き放されまくりで悲しい…)、このくらいの長さなら全然大丈夫でした。……というかむしろ、皆のつらい気持ちにものすごく寄り添えてしまうので、序盤はどの話もつらい……。「ああ、そういうことってあるよね」みたいな、経験としてつらさがわかる話だけじゃなく、全然自分からは遠い存在のエピソードも読んでてぐっさぐっさ来るので、これは作者さんの力なんだと思います。
そして、つらい気持ちにシンクロできるからこそ、パッと光が差す瞬間、主人公と一緒に嬉しくなれるのです。
疲れ果てたそれぞれの主人公たちの様子を見て、彼や彼女らにぴったりのお茶を出して、おいしいメニューで心を癒すシャールさん。
シャールさんのセリフ、本当に本当に素敵なものが多いです。メモしてたらすごい量になった。
「苦しかったり、つらかったりするのは、あなたがちゃんと自分の心と頭で考えて、前へ進もうとしている証拠よ。」
「あなたも、自分のことを”ただの”とか”つまらない”とか言っちゃ駄目。それは、あなたが支えている人や、あなたを支えてくれる人たちに対して、失礼よ。」
「居場所なんて、どこかに無理やり見つけるものじゃないのよ。自分の足でしっかりと立っていれば、それが自ずとあなたの居場所になるの。要するに、あなたがどこに立ちたいかよ。」
「自分を憐れみたくなったら、誰かに八つ当たりしたり、甘えたりしないで、自分で自分の機嫌を上手に取って元気になる。それが大人の嗜みというものよ。」
「……食べ物って、すごいんですね。」
「それはそうよ。自分の身体を作るものですもの。」
出てくるメニューはマクロビオティックが基本になっていて、おいしそうだけど自分にはとても無理……ってなってしまう。けど、シャールさん自身が「結構いいかげんにやってる」って言ってるのでとても励まされる(そもそも2巻目の表紙はトルコライスだ!トンカツのってる!)。せめて外食は少しでも減らして、野菜は季節のものをたくさん食べよう、新鮮なものを探して買おう、とか考えられるようになった。
そして「これならできそう!」って思って、すぐ買いに行ったのがお茶の材料。シナモンの香るジンジャーティーにカルダモンをブレンドしたシャールさんのオリジナルのお茶、すごく頭がスッキリする。スパイス売り場に並んでたパウダーふりかけただけやけどね!!
単純だなあって自分でも思うけど……いい習慣なら続けていきたいし、そのきっかけが「物語」なら、ずっと覚えていられる(テレビでよく見る…あれが体にいいとかこれがいいとか教えてくれる番組、見てて「へー」ってなるけどとにかく記憶に残らない)。
本当はシャールさんに顔色とか見てもらって「あなたにはこれよ」ってお茶を出してもらいたいけど、私の街には残念ながら「マカン・マラン」はないので、自分で選ぶしかないですね。ハーブの効用とかも調べてみたくなった。マクロビなんて、自分とは対極にあるものだと思ってたのにねえ(元パティシエだし。白い砂糖を禁じられたら私たちどうすれば??って感じだし)。
ひとつのカフェが舞台の物語なので、当たり前だけど(ほぼ)ずっと同じ街での話なんだけど、街だけでもそれぞれの主人公で見え方が違っているのがとてもおもしろい。一人の主人公がただ見上げるばかりの高~いタワーマンション、そこに住んでいるセレブ妻が郷愁を感じる商店街、とかね。でもセレブ妻にはセレブ妻の悩みや苦悩がある。大成功して自分の目指す道を進んでいる…と思っていた人も突如苦難に巻き込まれたりする。幸せそうに見えても、実はそうではない人はたくさんいるのかもしれない……と思ってしまう。もちろん、逆もあるだろう。だから、見た目は関係ないし、見ただけでは何もわからないのだろう。
”本当の自分を取り戻したければ、身体と精神を鍛えろーー”
たくさんの主人公たち、そしてシャールさんを見ていて、本当の自分で生きるためにはそれなりの努力が必要なんだと思った。
おいしい料理で心を癒し、時には自分を甘やかしながら、不安や苦しみと戦っていく。夜食カフェ「マカン・マラン」がないこの街では、代わりに本棚のこの本が、「止まり木」になってくれそうだ。